A: 従来の「顧客管理」とは、「顧客満足経営」(CS運動)中で言われてきたものです。
これは、武田哲男著「CS”顧客満足”全社推進」(1993年ダイヤモンド社)など読むとよくわかります。主に、顧客満足をアップすることが企業理念として強調されており、その内容は社員がどう顧客に奉仕的精神で接するか、顧客へのコミュニケーションの仕方が重要視されています。つまり、顧客データ分析はしますが、基本は企業側(営業)と顧客とのコミュニケーション管理だということです。
(※参考⇒日経流通新聞の匠英一記事
http://www.crma-j.org/elibrary/nikkei03826.html)
ところが、CRMの本来の意味は「顧客管理」ではなく、「顧客関係性管理」ということからもわかるように、”関係性”という点に特徴があります。その関係性は、メーカであれば販売会社や卸企業が顧客です。ユーザはそのメーカからすると「顧客の顧客」となります。つまり、直接の顧客だけを対象にした関係をさすものではなく、「顧客の顧客」とパートナのような販売会社を含めての「法人顧客」など、複雑な顧客視点が必要となってくるのです。例えば、デルのように直販をネットでするようなeビジネスは、日本のメーカでは販売会社との関係性が悪化することを考慮するとできません。
そうした企業の組織間のシステム全体の在り方を強調している点がCRMの特徴なのです。会社という組織の仕組みを顧客関係性の中で再構築し直し、そのプロセスで”全体最適”のシステムに変えていく戦略性が強調されるわけです。このようなことから、顧客満足度をすべての経営基準にする「顧客満足経営」は、収益性(ROI)の科学的な因果関係を把握していくCRMと似ているようですが、中身は180度違うといってよいでしょう。詳細は、匠英一監訳「CRM入門」(東洋経済出版2000年)などを参考にしてもらうとよいと思います。
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